奥に眠る物語
特等席
それから彼が何度か来店して分かったことがある。
まず、彼は窓際の席に必ず座る。
何故か彼が来る時は客は誰一人としていない状態なので絶対空いている。
そしてあのロングコートは決して脱ごうとしない。
一度だけ、暑くないのかと訊いたことがある。
その時彼はこう言った。
「冷房に弱くてね、それに僕は寒がりだから」
真夏にロングコートはいかがなものかと思ったが、そう言われてしまったので何も言わないでおく。
あと、彼は紅茶以外は絶対注文しない。
品種は毎回違うが、コーヒーを頼んだりしたことは私が知る限りではない。
あとケーキやランチ系も全てだ。
まぁ、ランチ系は彼が来る時間帯が夕方頃なので中途半端な時間だからかもしれないが。
・・・一つだけ、分からないことがある。
それは、彼の名前だ。
別に名乗らずとも相手は客なので、どうでもいいことかもしれないが、何度も来ていて、しかも顔見知りだ。
知りたい、なんて思ってしまう。
だから。
今日、彼がこの店に来たら訊いてみようと思う。
「・・・何をだい?」
「っわあぁあ?!!」
しまった、不覚。
集中し過ぎて彼が入ってくる音が聞こえなかった。
しかも心まで読まれるとは。
まず、彼は窓際の席に必ず座る。
何故か彼が来る時は客は誰一人としていない状態なので絶対空いている。
そしてあのロングコートは決して脱ごうとしない。
一度だけ、暑くないのかと訊いたことがある。
その時彼はこう言った。
「冷房に弱くてね、それに僕は寒がりだから」
真夏にロングコートはいかがなものかと思ったが、そう言われてしまったので何も言わないでおく。
あと、彼は紅茶以外は絶対注文しない。
品種は毎回違うが、コーヒーを頼んだりしたことは私が知る限りではない。
あとケーキやランチ系も全てだ。
まぁ、ランチ系は彼が来る時間帯が夕方頃なので中途半端な時間だからかもしれないが。
・・・一つだけ、分からないことがある。
それは、彼の名前だ。
別に名乗らずとも相手は客なので、どうでもいいことかもしれないが、何度も来ていて、しかも顔見知りだ。
知りたい、なんて思ってしまう。
だから。
今日、彼がこの店に来たら訊いてみようと思う。
「・・・何をだい?」
「っわあぁあ?!!」
しまった、不覚。
集中し過ぎて彼が入ってくる音が聞こえなかった。
しかも心まで読まれるとは。