奥に眠る物語
それから、李玖は何度かこちらを振り向いて確認してきた。

李玖に追い付くと、そこには大きなマンションがあった。

そのマンションはまだ新しいらしく、入居者募集の看板が花壇にたっている。

「こっちやで。 迷わんといてな」

「李玖こそ、案内してる間に迷わないでよね」

李玖が先に入り、続いて彼も入っていく。

私は慌てて二人の後ろをついていく。

エレベーターに乗って、5階へと登る。

部屋の前まで案内され、急に李玖が止まった。

「じゃあ あとはよろしゅう頼むわ」

そう言って、李玖はまるで蜃気楼のように揺らめいて消えてしまった。

突然のことに混乱した私は李玖がいた場所を確認する。

「えっ あれ、なんで李玖さん?!!」

「・・彼はね、これだよ」

「・・・これは、指輪?」

彼が手にしていたそれはシンプルなプラチナの指輪。

サイズからして多分男の人用だろう。

「え、指輪と李玖さんと何の関係が・・・?」

接点が見付からない私は分からない事ばかり。

彼はまるで全て分かっているような顔で言った。

「つくも神って知ってるかい? 彼はそれだよ」

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