奥に眠る物語
つくも神?

何それ、分からないよ


「なんですか、それ」

「・・・知らない、か」

彼は悲しそうに笑いながらそう言った。

なんでそんな悲しそうな顔するの?

私は自分の無知を悔やんだ。

私が知っていれば、彼はこんな顔をせずにすんだのでは、と。

「とりあえず、この家の人に話を聞こうか」

「えっあの・・・」

私が止めようとした時にはすでに遅く、彼は呼び鈴を鳴らした。

中から人が近付いてくる音が聞こえる。

「・・何か用でしょうか」

中から背の高い女性が顔を出した。

私は慌てていると、彼が勝手に話を進めた。

「僕らはリクさんの友人です。 ご焼香をさせていただきたくやってきたのですが」

「あ、・・あぁ主人の・・ どうぞ中へ」

そう言って促されたので、彼は一礼して何のためらいなく入っていった。

私も一礼して入ると、女性は弱々しく笑って玄関を閉めた。

「ちょっと憑雲さん なんであんな嘘ついたんです?」

彼に聞こえる程度に声を潜めて話しかけると、彼はこっちをみて笑った。

「あながち、嘘でもないんだ」

女性が案内してくれた部屋に入りながらそう言って、写真に目をやる。

つられて写真に意識を向けると私は目を疑った。
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