奥に眠る物語
「あの指輪。 相方がいらっしゃらないようですね」

ニッコリと笑って女性を伺う。

ってなにやってんだこの男は!!
デリカシーがなさすぎだよ・・・

私はお茶をふき出しそうになりながら彼をみた。

だが、彼は私を気にせず女性の返答を待つのみ。

女性は目を泳がせながら、ゆっくりと口を開いた。

「実は・・・ 最近になってこつぜんと消えたんです。」

「・・それって、隙間とかではないのですか?」

指輪など小さなものは大体タンスの隙間に入りやすいので、私はその可能性を探ってみる。

「いえ。 家中捜したのでそれはないかと・・・」

「大丈夫。 今日、必ず見つかりますよ」

彼はそう言って立ち上がった。

どっからその自信が出るのか不思議でしょうがない。

「とりあえず、貴女はそこから決して動かないでください。 行くよ、皐月」

「えっあの!?」

ズルズルと引きずられるように仏壇のある部屋へ連れて行かれる。

彼は襖を閉めて、私に向き直る。

「さて どうしようか」

「・・・まず、さっきの話の続き お願いします」

つくも神とかよく分からないまま終わらせるわけにはいかない。

私は睨むように言うと、彼は溜め息をついて座った。

< 25 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop