奥に眠る物語
「つくも神っていうのは、簡単にいうと

《物に憑く神様》ってこと。

あの李玖は、指輪に憑いている神様ってことになる」

「かみ、さま・・・」


信じることが出来ないが、消えた李玖の事を考えると納得できる。

「つくも神はね、思い入れが強い物に宿りやすい。 だから李玖があの指輪に宿ったのも分かるだろう?」

「・・・なんとなく」

大好きだった人とお揃いで、しかもその大好きな人は今この世にいない。

すがれるものは遺品だけ。

故人を思う気持ちが強いため、きっと李玖が出来たのだろう。

「いいかい、皐月。 キミは今からこの部屋にいるはずの、《和華》を探すんだ」

「わ、か・・・?」

聞き慣れない名前に首をかしげると、彼は付け加えるように言った。

「李玖が探している人のことだよ さぁ、頑張って」

「はぁ・・・」

私は立ち上がってタンスの隙間を調べる。

埃っぽいその隙間をみても何もない。

「ないですよー? 憑雲さんー」

そう言って振り返ると、彼はこちらをみているだけで何もしていなかった。

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