奥に眠る物語
自由人な彼は置いといて、ゆっくりと火の玉に近付いく。

「和華、さん? 私、あなたを探して欲しいと李玖さんに頼まれた者です」

話しかけてみるが、まるで返事がない。

よくみると、火の玉は仏壇の後ろで弱々しく揺らめいている。

「憑雲さん 指輪・・・この裏にあるみたいなんですけど」

「あぁ、そんなとこにいたのか じゃあ動かそうか」

「・・・え?」

彼はようやく立ち上がって仏壇を見下ろした。

これを動かすのは罰当たりではないのだろうか・・・?

でも指輪を取るため、大目に見て貰うしかなさそうな気配。

「リクさんちょっとすいませんね」

ゴトンッと大きな音をたてながら隙間を開ける。

そこには、埃まみれになった小さな指輪があった。

「あ、あった!! 良かった・・・」

「和華、大丈夫かい?」

私が両手で優しく包み込むと、彼が指輪に語りかけた。

すると突然、指輪がかたかたとざわつき初めて・・・

「な、なんや 外・・・? どうして・・・」

真っ黒な髪の前髪を真っ直ぐに切り揃えた女性が、顔を真っ青にしながら両手で頬を押さえている。

私はいきなりのことについていけず、間抜けな顔をしながらみていると、彼が口を開いた。
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