奥に眠る物語
彼は溜め息をついて女性の元に近寄る。

「あの、僕決して「リク、リクよね ねぇそうでしょ?!」

「え、あぁハイ。 俺は李玖やけど・・あ、アンタ、リクさんの婚約者さんのサユさんやな!!」
「・・・え、」

李玖の袖に伸ばす手をピタリと止めて、サユは引きつった顔で李玖を見つめる。

李玖は悲しそうに笑って、サユの頭に手を乗っけた。

「スマンな、変に期待させてしもうた。 俺らはアンタらのペアリングや」

「・・サユ、ウチ、あんたに嫌われてしもうたんやろか?」

「え、なんで・・・?」

悲しそうにする和華の言葉にハッとして、顔を上げるサユ。

和華は言葉を探しながらゆっくりと話し始めた。

「ウチな、ずっとリクさんの後ろに居たんや。 けど・・自分じゃ出られへんし、サユも見つけてくれへんし、その、寂しかった・・・」

「・・そう、だったの」

サユはそう言って黙り込んでしまった。



沈黙が部屋を包む。


私と彼は、ただ見ているだけ。

下手に首を突っ込んで場をこじらせるわけには行かないから。

そして沈黙を破ったのはサユだった。

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