奥に眠る物語
後に残った指輪。

それを優しく包み込むように、サユは手に取った。

「・・・ありがとう」

「さぁーってと! 俺も疲れたしもうええな。 ・・あぁ、そうや、二人とも!!」

そう言って伸びながら思い出したようにこちらをみた。

「今日はほんま、おおきに! アレもコレもアンタらのおかげや!!」

「ああ。 もう呼ぶなよ」

「ってあなたは何もやってないでしょ! ・・良かったですね、李玖さん」

余裕ぶる彼にしっかりツッコミをいれて、李玖に向かって笑いかける。

李玖は子供のように無邪気に笑って指輪へ戻った。

サユはその指輪も手に取って、仏壇の写真の前に供えた。

「これで大丈夫ですね、では僕たちはこれで」

「へっ? あ、あので、ではー!!!」

彼にズルズルと玄関まで引っ張られてしまったので、ろくに挨拶できないままその場を去る事になってしまった。
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