奥に眠る物語
翌朝。

やけに身体がだるい。

真夏のはずなのになぜか、凄く寒い。

私はベッドから降りて体温計を手に取ってまたベッドにもぐりこむ。

まさか、昨日雨に濡れたせいで風邪をひいたとでもいうのだろうか。

夏風邪はバカがひくという。

是非ともそれだけは否定させていただきたい。

しばらくして、部屋に電子音が響いた。

体温計を見ると

38.7。


完璧、これは風邪だ。


オーナーに休む連絡をいれなくては。

携帯を手探りで掴んで店の電話にかける。

程なくしてすぐにつながった。

『はい、カフェ・サリエルです』

「・・皐月です」

『おお、ひどい声だな』

喉をやられているせいか、上手く声が出ない。 

電話越しにけらけらと笑うオーナーに殺意が芽生えつつ、私は用件を言った。

「すいません ・・今日出れません・・」

『おう。 んじゃ、まぁ明日には出れるよう一日で治せ』

「・・え、いや まぁそれなりに頑張ります」

『そうか んじゃ病人にむりさせるわけにはいかないから切るぞ』

そういって一方的に切れてしまった電話。

私はため息つきながら天井を見上げる


< 36 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop