奥に眠る物語
風邪をひいたのはいつぶりだろうか。

もしかしたら中学校以来か。

学校が夏休みでよかった、と考えながら目を閉じる。

そういえば今日、彼は来るのだろうか。

紅茶、淹れてあげたかった。

私は首元にあるネックレスを持ち上げて石を覗く。

やはり、オレンジ色のもやもやっとしたものがそこにあるわけで。

結局また返しそびれてしまった。

しかも付けたまま寝てしまった。

私は少し罪悪感を感じながら、不意に襲い掛かってきた睡魔に身をゆだねた。




ピンポーン。



玄関から人がやってきた知らせが鳴り響く。


その音が頭に響き不快感を覚える中、この家には私一人しかいないのでそばにあったパーカーを羽織り、手櫛で髪を整えて出る。

「・・・どちらさま」

「大丈夫かい、皐月」

・・・・・え、と。

熱のせいで回らない頭のせいなのか、状況がつかめない。


なぜ、目の前に彼がいるのだろうか。




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