奥に眠る物語
何故、彼は私の家が分かったのだろうか・・・？

オーナーに訊いたのかな、と頭の隅で考えていると彼が戻ってきた。

「お粥作ったけど食べれる？」

「食べれるけど・・・あなたが作ったの？」

まさか彼がそんなことしてくれると思わなかったのでとても驚いた。

彼は小さく笑って私の横に腰を下ろした。

「他に誰が作るって言うんだい？」

「え、いや ちょっと意外だったから」

上体を起こして、彼が持ってきてくれたお粥を覗く。

真っ白なご飯がとても美味しそうだ。

私はスプーンを取って口に運んだ。

「・・・味が分かんない」

「そりゃ、風邪だからしょうがないよ 食べられるだけ食べて」

「・・ん」

塩っ気などよく分からないが、とても優しい味がする。

あっという間に食べ終えると彼はお粥の入っていたお椀をどけて、薬を手渡してきた。

なんて用意周到なんだ、この男は。

「・・っん。飲んだ・・」

「これなら明日には熱も下がってそうだね」

「そう、かな・・・」


そっと撫でるようにおでこに触れてくる。

ふと彼が私の首元に視線を落した。

見るとそこには、あの黒い石のネックレス。

「これ、つけてるんだね ・・・嬉しい」

まるで自分のことのように嬉しそうに笑う彼。

このネックレスにどれだけの思いがあるのだろうか。

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