奥に眠る物語
「・・・あなたは、何なのですか?」

ぼんやりとそんなことを口走る。

彼は苦虫を噛んだような顔をする。

そして重々しく口を開いた。

「僕は・・僕だよ」

・・・そんなことを言われたら追求できなくなるじゃない。

私はちょっとだけムッとしていると、急に眠気が襲ってきた。

多分、薬が効いてきたのだろう。

「・・そろそろ薬効いてきた頃かな。 じゃあ僕はこれで失礼するよ」

「はい ありがとうございました」

「お大事に、ね」

そう言いながら彼は帰っていった。

静かになった部屋で一人、ぼんやりと彼のことを考える。

真夏でも長袖のロングコートを着て涼しそうな顔で笑う人。

黒髪で銀褐色の瞳の人間離れした色を持つ人。

そして・・・


どこか淋しいような、悲しいような雰囲気を持つ人。

私に出来るのならば彼を癒してあげたい。

・・・出来るならば。

そう思いながら私は眠りに落ちた。

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