奥に眠る物語
「ホンット、あきれるくらい甘党だな、お前」

「そんなことないです! 私、川上さんって人生の半分を損してるってコーヒー飲むたび思うんですよね」

「はぁ? まだ乳臭いガキが何言ってんだ」

そう言いながら、オーナーはコーヒーを飲み干したのか、また新しいのをつぎたしながら溜め息をつく。

「なっ! ガキはないでしょう!! 私もう18なんですから」

「いーや、俺からみたらお前はガキだ 十も下なんだぜ?」

「そ、それはそれってやつです!!」

私は空気を紛らわすためにコーヒーを飲んだ。

ちょっとだけ砂糖をいれ過ぎたかも。

「だから、川上さんはこんな甘くて美味しいのを分からないのが損なんです」

「甘いのねぇ・・・ 昔は好きだったな」

どこか懐かしむようにそう言いながら砂糖を手に取る。

私はいれるのかと見ていたが、いれる気配はない。

凄く残念。

「へぇ、川上さんが甘党とか意外」

「別に甘党って訳じゃない 甘いのが好きだったってだけで」

「それを人は甘党って言うんです」

ミルクを足しながらそう言うと、オーナーは噛み締めながら笑った。

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