奥に眠る物語
「あぁ・・そんなこと誰かにも言われたな」

「え! 川上さんに友人がいるなんてびっくり!!」

「おま、俺をなんだと思ってんだ」

砂糖の蓋を開けて、一つまた一つと量を増していく。

それは3、4個どころではない。

とにかく数え切れないくらいだ。

それをティースプーンでかき混ぜて飲む。

「・・・うわ、まずい」

「そりゃ、そんなにいれれば」

私が苦笑いすると、オーナーはムッとした表情をした。

「俺は昔これくらいいれないと飲めなかったの!」

「私より甘党じゃないですか」

さすがにオーナーと同じくらい砂糖をいれては飲めない。

私が自分のコーヒーを飲んでいると、チリリンと客が来た合図がなった。

「いらっしゃい」

「いらっしゃいま、せ」

私は少しだけ目を見開いた。

目の前にあの空色のコートの彼がいたからだ。

「やぁ。 ・・おや、貴方がオーナーさんですか?」

「はい。 何かご不都合でも?」

ニッコリと笑い合う二人の間から急激に冷めた風が流れているような気がする。


気のせいと思いつつ、私は彼をいつもの窓際の席へ案内した。

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