奥に眠る物語
「・・もういいや あんたに文句言っててもしょうがないし」

「なっ!? てめ、・・っ、ぅ」

そういって、彼はオーナーのみぞおちに一発拳を入れた。

オーナーの身体はミシミシと骨がきしむ音を立てながら倒れこんだ。

「か、川上さん?!」

「大丈夫だよ 少し寝てもらっただけだから」

そういいながらこちらを見る彼は、笑っていた。

私はホッとしながら彼に駆け寄って、頭を下げた。

「ありがとうございました。 憑雲さんが来てくれなかったら・・私」

「皐月に何もなくてよかったよ。 さてそれじゃ行こうか」

彼は李玖と和華に目配せしてオーナーを奥に運ばせた。

「あの、オーナーは・・・」

「あぁ、心配いらないよ ちょっと僕が来てからの記憶を無くしたくらいで」

それって十分危ないと思うのは私だけ・・・?

そう思ったが、口にせず閉まった私はチリリン、という音に反応して顔を上げると彼が扉を開けてくれていた。

「さぁ、行こう おいで」

「・・・ハイ!!」

やさしく微笑みながら手を差し伸べてくれる彼の手を取って、私は店を後にした。
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