奥に眠る物語
彼に連れてこられたのは、小さな公園の森の中。

辺りは真っ暗なので、彼の手を離してしまったら私はこの森の中で絶対迷子になるだろう。

怖くて、思わず彼の手を強く握り締めると彼もまた握り返してくれた。

「あ、あの! 一体どこへ行くんですかっ?」

「もうすぐ着くよ。 ほら、着いてからのお楽しみってやつ?」

彼が声を弾ませながらそういうので、私は楽しみにしておくことにした。

しばらく歩くと、目の前が開けてきていた。

多分、彼の目的地なのだろう。

足取りが少し速くなっている。

「これが、キミに見せたかったものだよ」

「・・・っわぁ!!!」

開けたそこは、丘のようになっていた。

星が沢山瞬いていて、手を伸ばせば届きそうなくらい近いような不思議な感覚に襲われる。

どこを見ても沢山の星で溢れていて、私は自然と笑みが零れた。

「スゴい! スゴいです、憑雲さん!!!」

「そうかい? 気に入ったようなら良かったよ」

彼はそう言いながら地面に腰を下ろした。

私は星を見上げて腕を伸ばす。

近そうに見えてで遠い。

それが凄く悲しくて寂しくて。

手を伸ばすのを止めようとした時だった。
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