奥に眠る物語
ヒュンッと一筋の線が流れた。

流れ星だ。

「ちょ、憑雲さんみました!? 流れ星!!」

「うん。でもそれよりもっと凄いよ」

彼のほうを向いて空を指差していると、彼はゆっくりと立ち上がって見上げる

私も彼に続いて上を見上げて、目を見開いた。

幾重の流れる線。

それらは同じところを目指し、流れては消えていく。

ただそれを繰り返しているだけなのに、私はそれに目を奪われていた。

なんて綺麗で儚いんだろう。

「私・・流星群って初めてみました」

「そうか。 ならよかった」

「・・・はい」

そっと夜空から目を離して彼を見る。

彼の空色のコートが風でなびく。

なぜか、彼の周りだけ淋しい空間のように思えた。

彼だけ、夜も朝も来ていないような

ずっと時間に置いていかれているような

独りだけの空間。

手を伸ばせば届く距離なのに遠く感じる。

まるで、あの星のように。

私は、思わず彼のコートをギュッと握った。





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