奥に眠る物語
「・・・どうかしたかい?」

「え、あ いやその・・・」

存在が遠く感じたなんていえない。

言ったら、彼はきっと困った顔をするから。

私は俯いてギュッと彼のコートを強く握った。

「・・大丈夫。 キミがネックレスをつけていてくれる限り、僕はキミを見つけることが出来る だから僕は独りなんかじゃないよ」

そういいながら彼は、私を抱きしめた。

私は身体を強張らせたが、彼は力を強めようとせず、ただじっとしていた。

先程のオーナーみたいに嫌じゃない。

何でだろう、凄く安心する。

「あなたには、ホント隠し事できないですね」

「キミが分かりやすいだけさ。・・・嫌だったかい?」

彼の声が淋しそうな、悲しいトーンになる。

私はそれを首を横に振って否定する。

「そんなことない!! 私は「おぉ! 流れとるで、和華!!」

私の言葉を遮ってやってきたのは指輪夫婦。

彼に抱きしめられてるのが急に恥ずかしくなって、私は思わず彼から離れた。

多分、今の私は顔が真っ赤。

目の前の彼のニヤっとした顔を見ればすぐ分かる。


「あ、先に来てたんやなアンタら」

李玖のその言葉に苛立ちを覚えたらしい彼は、先程と全く違う無表情で李玖に近付いていった。
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