奥に眠る物語
「あれ、その子店内いれて良いんですか?」

オーナーが歩くたび、カチャカチャと爪を鳴らしながらついていく姿がなんとも愛らしい。

だが、ここは一応飲食店なので衛生的にはあまりよろしくない。

その旨を伝えると、オーナーは少し考えて口を開いた。

「あー・・ 大丈夫だろ、ドッグカフェとかあるし 看板犬ってことで」

「・・そうですか」

「そういうことだ。 ほら、開店準備!」

そう言いながら、私の肩をポンッと叩く。

心は大丈夫だと思っても、身体は正直なものだ。

ビクッと大袈裟なくらい跳ねた私を見て、オーナーは一瞬目を見開いたが、すぐにいたずらを思い付いた子供のように笑った。

「なんだぁ? 俺のこと好きになっちゃった感じか?」

「ち、違いますよ!! 勘違いしないでくださいっ」

「はいはい。 ま、俺は年下は守備範囲外だから 残念だったな」

慌てて否定すると、たしなめるようにそう言ってカウンターへ入るオーナー。

私は膨れながらカウンター席に座ると、オーナーの犬がパタパタと尻尾を振りながら寄ってきた。
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