奥に眠る物語
「そういえば、なんで今日はココに来たの?」

オーナーがいなくなったので、訊いてみる。

「ん? あぁ、憑雲さんがな 心配だから見てきてくれーって頼みにきたんよ」

「・・なんで、私なんかのために・・・?」

少し冷めてしまったコーヒーをすすりながら呟いた。

彼が私を心配だと思ってくれることが素直に嬉しい。

だが、嬉しい反面疑問が浮かんでくるのだ。

どうして私を心配する必要があるのだろうか、と。

「皐月、そのネックレス今もつけてるんやな」

不意にそう言われたので、私は我に返って適当に頷いた。

チラッと和華をみると、すごく嬉しそうにネックレスを見つめている。

まるで、自分のことのように。

いつだか、彼もそんな嬉しそうな目でみていた時があった気がする。

「憑雲さんな、すーっごく皐月のこと気にしててん。 常にそわそわな憑雲さんなんて滅多にみれたもんちゃうからな」

「そ、そんなに・・・?」

「そ! ちなみに李玖さんは憑雲にどっか連れて行かれてもうたんや」

「それはまた気の毒に・・・」

私が冷めたコーヒーを飲み干して、カップを置くのとほぼ同時にオーナーが戻ってきた。

その手には先程持っていったカップが握られている。

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