奥に眠る物語
店内にリリ・・ン、と鈴の音の残響が響き渡る。

ぼうっとその音を聞いていると、私の視界に久遠が入ってきた

『・・あなたはホントになんでもない人間なんですね』

「え、何・・・?」

『いえ、つくも神と仲が良いので何かあるのかな、と思っただけです』

尻尾をゆったりと揺らしながらそういってくる久遠の言葉に少しだけ胸が痛んだ。

まるで、私とみんなは違うと言われているかのようだ。

・・いや、実際みんなは私にとって雲の上の存在なのだが。

そう考えると、なんだか遠い。

オーナーなんて手を伸ばせば届く距離なのに。

「おい、久遠 何変なこと言ってんだ? 皐月は皐月 それで十分だろ」

不意に怒ったような口調でいうオーナーの声に私は少しだけ驚いた。

まさか、そんなこと言われると思ってなかったから。

『で、ですが司様のお隣にこのような人間を置くなど、僕らはいつも反対しているのを覚えていないとでも言うつもりですか!』

え、と司<ツカサ>ってオーナーのことよね?多分。

反対って、・・え、私のこと・・?

一瞬だけ、目の前が真っ暗になった。

人間というだけで、こんなに言われてしまうのか。

私は人間というだけで迷惑をかけてしまうのか。

現実はあまりにも残酷で、非道だ。

「あ、の 私 ごめんなさい そうですよね、私みたいな一般人がいていい場所なんかじゃないですよね」

おねがい、オーナー

否定して。


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