奥に眠る物語
「・・・確かに、お前はただの人間で俺は土地神だ」

そう言うオーナーは、まるで何かを掴み損ねたような・・苦しそうな顔をしている。

やっぱり、私はいらないのかもしれない。

「・・ごめんなさい 私、いつまでも甘えちゃって。 迷惑でしたよね!」

今出来る精一杯の笑顔でオーナーを見る。

笑え、笑え、笑え。

笑っていないと泣いてしまう。

遠まわしに否定されて、今にも泣きそうだ。

視界がぼやけて何も見えない。

泣いてしまったらきっとオーナーは私を慰めるだろう。

転んでしまった子供をあやすように。

「はぁ・・ たく、お前は」

ため息をつきながら、私を見下ろしてくる。

あぁ、どうしよう。あきれられてしまった。

私はオーナーのさげすむような視線に耐えられず、俯くと我慢していた涙がパタ、とカウンターに落ちた。

「ごめ、なさ・・・!! 私「あー、もう! このバカが!!」

嗚咽を漏らしながら謝ろうとすると言葉を遮りながら、頭にまるで岩を勢い良く落とされたような衝撃が襲ってきた。

一瞬だけ意識が飛んだが、耐えてオーナーをじろりと睨む。

あぁもう、別の意味で涙が出てきたよ・・・

「なっなにするんですか!! 一瞬だけ走馬灯が出てきましたよ!!!」

「はっ! なんだ、涙が出るほど痛かったか?」

タバコに火をつけながらニヤリと笑うオーナー。

・・もしかして気をつかってくれたとか?

いや、このオーナーに限ってありえないか。










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