奥に眠る物語
夕暮れ
仕事が終わって、帰り道をゆっくり辿る。
結局、彼は本当に来る事はなかった。
・・・逢いたい。
こんなことを思うのはいつぶりだろうか。
そんなことを思いながら、空を見た。
あの彼の空色のコートのよう真っ青な空ではなく、夜に向かって走る空の色。
燃えるような炎の中、注がれる水のように混ざり合う紺色の夜の色。
それらはなぜか、とても悲しい気持ちにさせる。
何か、大切なものを奪っていきそうなそんな気にさせる。
私は空から地面に視線を落として一つため息をこぼした。
「何かあったのかい? お嬢さん」
「・・・っ!?」
まさか。そんなのありえない。
逢いたいって思って逢えるものじゃないでしょ、普通。
そんなのは都合よくお膳立てされた恋愛小説や漫画の中くらい。
だから、後ろから聴こえるのは幻聴で・・・
「まったく、僕が話しかけてるのに振り向きもしないってひどくないかな?」
「・・・え、なん、で こんなとこにいるの・・・?」
「そりゃ、キミが呼んだ気がしたからさ」
私の正面に立っているのは・・・見間違うはずもない。
彼・・憑雲だった。
結局、彼は本当に来る事はなかった。
・・・逢いたい。
こんなことを思うのはいつぶりだろうか。
そんなことを思いながら、空を見た。
あの彼の空色のコートのよう真っ青な空ではなく、夜に向かって走る空の色。
燃えるような炎の中、注がれる水のように混ざり合う紺色の夜の色。
それらはなぜか、とても悲しい気持ちにさせる。
何か、大切なものを奪っていきそうなそんな気にさせる。
私は空から地面に視線を落として一つため息をこぼした。
「何かあったのかい? お嬢さん」
「・・・っ!?」
まさか。そんなのありえない。
逢いたいって思って逢えるものじゃないでしょ、普通。
そんなのは都合よくお膳立てされた恋愛小説や漫画の中くらい。
だから、後ろから聴こえるのは幻聴で・・・
「まったく、僕が話しかけてるのに振り向きもしないってひどくないかな?」
「・・・え、なん、で こんなとこにいるの・・・?」
「そりゃ、キミが呼んだ気がしたからさ」
私の正面に立っているのは・・・見間違うはずもない。
彼・・憑雲だった。