奥に眠る物語
「あぁ、ほら 皐月もボーっと突っ立ってると危ないよ?」

「え、なんでですか?ってかどんだけの脚力なんですか!!」

ツッコミを入れていると、何かが走ってくる音がした。

何気なくその音がするほうを見ると、紙袋を目のところだけくりぬいたものを頭にかぶった人が手に包丁を持って全力疾走している。

・・・ちょっとまって、これ狙われてるのもしかして・・

「その刀返せぇぇぇぇ!!!!」

「やっぱり私ですかぁぁぁぁ!!!!」

思わずその場から走り出してしまった。

だって怖いじゃん!!

殺されるかもなんだよ!!?

「うわ、今度は包丁とかどっから持ってきたんだか」

「ちょ、ちょちょちょ これ、もしかして憑雲さんが取ったんですか?!」

「うん。 だって刺されるかもだし 傷ってねぇ、すぐ治るっていっても痛いのは一緒だから」

「だからって私に押し付けないでくださいよ!!!」

涼しい顔で塀の上を走る彼を恨めしく思いながら、走り続ける。

息が切れてきた。

運動は苦手なのになんでこんなに全力で走らなきゃいけないって言うのよ!!

「かぁえぇぇせぇぇぇぇ!!!」

「いやぁぁぁぁ!!!」

も、だめ 走れないよ!!!

持久力のない私は、足がもつれ始めていた。

そして見事に何もないところですっころんでしまった。

「いった・・ってやば、い・・・?」

慌てて立ち上がって後ろを見ると、誰もいなかった。

あれ、さっきまで追いかけてきてた変な人は・・・?

「あ、多分向こうもスタミナ切れだ」

「え・・・助かった・・・」


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