奥に眠る物語
彼は困ったような顔をしながらネックレスを受け取った。

なんでそんな顔するのか分からない。

何かあるのだろうか?

「あのっ 私・・「うん、そうしよう」

私の言葉を遮るように彼はネックレスを握り締めて、私に近付いてきた。

なんなんだ、この男は。

思わず後退ると、彼は私の手をとって、ネックレスを渡してきた。

「壊したくなったら壊しても良い。 ・・・キミに持っていて欲しい」

「で、でも」

「それじゃ、また」

そう言って彼は出てってしまった。

呆気に取られた私は、呆然と立ち尽くしながら手にあるネックレスを見つめる。

何故か、トクン、トクンと鼓動のようなものがした気がして、私はそれをギュッと握り締めた。

あの男は一体何者なのだろうか。

彼が来ると、疑問ばかりが残っていく。

気に食わない。

今度来たら、色々訊いてみよう。

私は一人で意気込んで、片付けを始めた。

< 8 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop