奥に眠る物語
それから数日。

コーヒーを挽く、いい香りがする。

私はカウンターで頬杖をつきながら、ネックレスを見つめていた。

「おっ? なんだ、珍しいな そんなもん持ってるなんて」

「・・川上さん」

私は視線を上げて、川上〈カワカミ〉さん・・・オーナーを見た。

切れ長の瞳で、短髪の彼は顎のヒゲをいじりながらネックレスをみてきた。

「・・・真っ黒な石、ねぇ。 趣味悪いなお前」

「なっ 私のじゃないです! お客さんから…預かってるんですよ」

チャラ、と鎖を伸ばして石の奥でオレンジ色に揺らめく何かを見つめる。

これは一体なんなのだろう。

私はオーナーに訊いてみることにした。

「ねぇ川上さん これ、なんだと思う?」

ずいっと石をオーナーに近付けてみる。

オーナーはじっと目を細めながらみて、首をかしげた。

「何って…単なる石だろ それともあれか? 良くいうパワーストーンってヤツ」

「違いますよ、もっと良く見てください! 奥にある、このオレンジ色のモヤモヤ~ってしてるの」

「はぁ? ちょっとよく見せてみろ」

そう言ってオーナーはひったくるようにネックレスをとって、目を凝らしてみている。


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