貴方が忘れられない。
一つ、二つ
こうして、私は無くしていく。大切なものを、指から簡単にすり抜けるそれを恨めしく思いながらもどこかでほっとしている。そんな人間だった。
「そっかー。夏休みは会えないのね」
きっと、もう会えないよ。会わないもの。
「そのおじさんによろしくな」
「うん。結構年いってるから遊びに行くってより介護って感じ」
「そっか。夏休み明けたら色々エピソード出来てそうだな」
「聞かせてね、あいちゃん」
声に出さず、頷く。笑顔は完璧。だって練習したもの。
「あーあ、夏休み中あいの飯食えねえな」
「ばーか! 私はあんたの家政婦じゃないっての!」
「知ってる。あいは俺の大事な、」
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