貴方が忘れられない。
「にしても、急な話だな。おじさん家行くなんて」
「まあね」
「病気とかか?」
一瞬自分のことを聞かれたように感じ動揺した。隠すように、うん、そうと笑う。
「なんの?」
「ガ、ン。母方だから」
共に看病し、看取った流は家ガン家系だと知っている。眉を顰め心配そうにこちらを見る。おまえは大丈夫なのかと言われてる気がしてあははと強引に笑ってやった。
「私は毎年検査してるし、大丈夫。若いもの、どうってことない」
嘘をつくのはもう慣れたのかもしれない。ちくりともしない心に不快感を抱いた。ああ、なんて醜いのだと。
「頑張れよ」
ああ、駄目だ泣きそうと俯いた。ありがとう、そう呟いた声が伝わってればいい。
その後は珍しく何も話さずゆっくりと帰った。
好きよ。全部。
でも、忘れよう。
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