貴方が忘れられない。
「苦しんだ分だけ、希望が見えてきます。あいさん、怖かったらナースコール押して良いですからね。俺か、看護師さんが話を聞いてくれます。病は気からってよく聞きますけど本当なんですよ。思い込みで、治ってしまった方もいるって話ですから」
くすくす笑う私に満足したのか、お大事にと病室を出て行った。よく気持ちを汲み取る人だなと思う。
そういえば、流もそうだった。お母さんとお父さんでも分からなかったことを彼は言い当て慰めてくれる。そんな彼が、愛しくて、好きだった。
「忘れるなんて、無理だ」
こんなにも、心に住みついた彼を忘れてしまったらきっと無くなってしまう心は半分なんかじゃない。もっと大きく抉られていく。それに耐えることができる心は生憎持ってない。
とても、自分勝手なのは分かっているのだけれども。
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