貴方が忘れられない。
「うん。そうする」
じゃあ、手続きして置くからなと頭を撫でた。その微笑みは、虚しさと優しさどちらの意味なのだろう。
「明後日から夏休みだよな。それまで頑張って行って来い」
分かったと笑うと深く頷く父。どこまでも優しい父に感謝した。母を深く愛し、最期を看取ってから数年。次は一人娘が同じ病にかかりこの人は今どんな心境なのだろう。悲しい? 悔しい? やりきれない?
そんなことを考えればこんな身体で産まれてしまった自分を恥じた。
どこまでも苦労させてしまってる。ただでさえ片親での生活は辛いだろうに。母子家庭に比べ父子家庭は不利なのだ。育てられた私は身を持って知ってる。父の苦労と強さを。
「流くんに、心配させてしまうな」
はは、と笑う父に釘を刺すように言う。言わないでと。彼にも友人にも、誰一人言わないでと。
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