《短編》交差する恋
帰ろうと歩き出した時―――
「おい」
後ろから声がしてふり返ると、山内くんがフェンス越しに呼んでいた。
「…はい…?」
何を言われるのかと、緊張した顔で聞いた。
「あんた、俺のこと好きなの?
正直困る。
つか、話したこともないのに、好きとか気持ち持たれても、って感じだし。
じゃ。」
彼はそれだけ言うと、片付けへと戻っていった。
家に帰ってすぐ、あたしは声を押し殺して泣いた。
まだ今からだったあたしの恋。
あたしの恋は一瞬にして散った。
それからあたしは、恋に興味を持たなくなった。
それより《したくなかった》が正しいのかもしれない。