狐
壱
私は途方もない時を生きて来た。
だが…心から愛し、愛し合ったのは彼だけ。
先ずは、九尾の私が人間の男と恋に落ちたか…
どうして出会ったか…そこから話そう。
私はとある山の祠に住んでいた。
毎日、毎日…代わり映えのしない日々。
楽しみと言えば、祠の前に咲き誇る花々を眺め、町に降りた動物達が見聞きした事を聞くこと。
そして、水鏡から世を見る事ぐらい…
今、人間達は己が世界を統べようと必死になっている。
そんな毎日に飽きた。
咲き誇る曼珠沙華を眺め様と祠の外に出ると…血の匂いが。
血の匂いをたどり、向かって見れば…そこには曼珠沙華の様に紅く染まった人間の男が1人。
『人間が迷い込んだのか…ふぅ、しょうがない。』
そう呟き、私は男へと近ずく。