すると、男は私に気付き…刀を構える。
傷だらけで脇腹からは血が溢れ出し、片腕は肘から下が無くなっていた。止血はしてあるものの…意識を保つ事さえ、ままならない筈。

なのに…
男の瞳は強い輝きを…力を失っていなかった。
この男は本当に人間だろうか?

「一体っお前は何者なんだ?こんな山奥に…」
『それは私がそなたに聞きたいね…人間が何故、この様な所に居るのです?』
「人間って事は…あんたは人間じゃないのか…」
『あぁ…そう言えば今は、人間の姿でしたね。ではこれで分かるでしょう。』

人間に化けていた事を忘れていた私は変化を解き、本来の稲荷つまり狐の姿に戻った。
男は目を見開き此方を見詰める。
そして…


「お稲荷様は…死にかけの俺の魂を取りに来たのか。ついにお迎えが来たってのか…。フッ…あんたになら、魂を取られても良いかもな。最後にあんたみたいなべっぴんさんに看取って貰えるなんてな…想ってもいなかったよ。」


私は…俺の言葉を聞き驚いた。
この男は「あんたになら」と言った。
本来の私の姿を見ても、恐れるどころか…受け入れ、美しいと言ってくれた。


『そんなこと初めて言われたよ。』
「本当に?そりゃ驚いた。みんな見る目が無いんだな(笑)」


何故か…この男を死なせたく無いと、側に置き笑って欲しいと、共に生きたいと…思ってしまった。

この気持ちは、恋と言うものなのかもしれない。
意識してしまったらっ鼓動が凄い速さで脈打つのが分かるっ~!!

心の臓が弾けてしまいそうだ…

どうすれば…。
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