その警官さんは小さなアパートに私を置いてまだ仕事が残っていると言って仕事場へ戻って行った

「汚なっ…」

初めて入った男の人の部屋は汗臭くてすっごく汚かった

なんでだろ…

なんだか少し笑ってしまった

脱ぎ捨てられた服を洗濯機に入れて干しっぱなしの服を畳んでゴミを拾って…キッチンとは言えない洗い場の皿とコップを洗って掃除機をかけていると声が聞こえた

「お前…何してんの?」

「…分かりません」

「何してるんだよ、こんな時間に」

時計をみたら10時を超えていた。

「ごめんなさい…汚過ぎて…体が勝手に…」

「悪かったな」

「あっ!イヤ、あの…」

「いいよ、助かったよ」

彼は笑いながら、テーブルに買ってきたお弁当を開いた。

「なんも食ってないだろ?こんなもんしかないけど…」

「いえ、お腹はあんまり空いてないので…」

「少しでもいいから」

「はい…」

そう言って私達は向かい合ってお弁当をつまんだ

「お前、名前は?」

「佐々木 羽実」

「うみ…か。」

「あなたは?」

「濱野 廉」

私はご飯を食べて途中だった片付けをまた始めた

「いいって」

「でも、途中で終わるのは嫌だから」

私が片付ける後ろから彼は話し掛けてきた

「羽実、あんな事しても何も変わんないぞ」

「…そんなの分からないじゃない」

「残された奴が苦しむだけだ」

「苦しむ人なんていないわ…」

「俺が苦しむよ」

「警官だもんね、なぐさめ…」

「!!」

突然唇が重なった

「慰めなんかじゃないよ」

そう言って濱野さんの唇がまた私の唇と重なった

初めてあった人なのに私は彼を拒まなかった



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