ワタシノタイヨウ
第一話 出会い
そう……


あなたと初めて出会ったのは、桜が満開の良く晴れた日だった。


私は今でもこの日の出会いを忘れられない。


この出会いがなければあなたは…


この出会いがあったから私は…



この日あなたと出会って、私の運命は大きく動き出した。



  * * * * * *



『行ってきま〜す。』


私、鈴原カスミ。
今日から高校2年生。


いつもより早めに家を出た私は、春の優しい陽射しの中、桜を眺めながら歩いていた。


『キレイだなぁ。』


花びらが、目の前に舞い落ちる。


(好きな人と一緒に見れたら、幸せだろうなぁ)


春の陽気のせいなのか、そんなことをぼんやり思いながら、のんびり歩いていた。


まだ本当の恋なんて知らない私なのに……。




(ん…?)


ふと一人の男性に気が付く。


彼は桜の木の下で立ち止まり、上を見上げていた。


いつもなら気にも止めず通り過ぎる私だったけど…。


なぜか私は彼が気になって、その姿をじっと見つめていた。


(何をあんなに真剣に見つめてるんだろう…桜を見てる…の…?)


しばらくして私はふと気づく。


こんなに桜がキレイなのに、彼は桜を見ていなかった…。


彼はその先にある空…ううん、太陽を見つめているようだった。


眩しそうに見つめるその表情は、なんだか今にも泣きだしそうで…とても切ない。


(なんか…目が離せない…)


私はドキドキしながら、しばらく彼を見つめていた。


すると彼の腕がスーっと動き、空へのびる。


その瞬間、私の背後から、サァーっと風が吹き抜け、桜が舞った。


(あっ…)


彼はゆっくりこちらを振り向く。


そして私と目が合うと一瞬微笑み、そのまま足早に駅の方向へ歩いて行ってしまった。



*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*
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