ワタシノタイヨウ
ユウ君がたわいもない話しを横で楽しそうに話していた。


私はあいづちをうちながら、黙って話しを聞く。


そんな私を見たユウ君は、ふいに立ち止まった。


「先輩…最近なんか変だよね。何かあった?」


私は足を止めず振り返り、


『え〜何にもないけどぉ。』


私は必要以上に明るい声で言い、ニッコリ笑って見せた。


『ほらぁ、置いてくよ〜。』


立ち止まっているユウ君にそう言うと、慌てて走り寄って来る。


その姿を見て…


(なんかユウ君犬みたい。って、私も先生にそう言われたっけ…ユウ君と私って似た者同士かも。)


そう思うとユウ君の気持ちが痛いほどわかり切なくなる。


私たちは再び並んで歩き出した。


「オレ…なんかさけられてる気がするんだけど…」


ユウ君はボソッと呟く。
いつも元気なユウ君の姿はそこにはなかった。


『えっ、気のせいだよ〜』


私は、やだなぁと笑いながらユウ君の背中をポンっと叩いてごまかした。


胸がズキンと痛む。


「ならいいけど…」


まだ納得してないと言った表情のユウ君だったけど、何かを思いついたのか、急に私の方を振り向いた。


「先輩暇だよね。これから買い物付き合って!」


『ちょっとぉ、暇って決めつけないでよぉ。』


私はユウ君をジロッと睨んだ。


「じゃあ、これからなんか用事あんのかよ。」


『な、ないけど…』


「ほらみろ。じゃ決まりな。」


『もう仕方ないなぁ。付き合ってあげるよ。』


私たちはお互い顔を見合わせて、クスクス笑い合った。



ユウ君の笑顔を見て私は思った。ユウ君とは今ままで通りでいいんじゃないかと…。


いつかはっきりしなくちゃいけない時が来ると思うけど…それまでは、この距離が二人にとって、居心地のいいものだと思うから。


私が甘えてるだけかもしれないけど…私は彼のように大人にはなれなかった。



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