ワタシノタイヨウ
そんな彼とのやり取りが続いていて、なんの解決策もない私は不安ばかりが広がっていた。


(はぁ…相変わらず先生喋ってくれないなぁ。あそこまで頑固だとは思わなかったよ。)


日直だった私は、担任に頼まれたプリントを持って、廊下を歩いていた。


すると、女生徒3人に囲まれ話しをしている彼の姿が目に入ってきた。


なんだか楽しそうに話しをしているように見える。女生徒の一人が笑いながら彼の腕に触れた。


(やだぁ、触らないでよっ!)


私の胸はチクチクし、気持ちはイライラしていた。


彼は正面から歩いて来る私には、まったく気づく様子はない。


すると……


(あっ…笑った。)


話しをしながら彼女たちに向かって、彼は小さく微笑んだ。


彼の笑顔を見るのはとても久しぶりだ。授業中でもほとんど笑う事はない。


私はぼんやりその笑顔を見つめていた。


こんな形で見る事になるとは思わなかったけど……。


私はなんだか悲しい気持ちになっていた。二度とあの笑顔は私に向けられる事はないと思うと、毎日彼に会いに行っている事がバカらしく思えてくる。


私は彼の横をうつむきながら足早に通り過ぎる。歯を食いしばり、涙を必死にこらえながら…。


その時彼が私をちらっと見た事に私は気がつかなかった…。



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