ワタシノタイヨウ
もう冷たくされるのにも少し慣れてきていた私は、気にせず彼に近づく。


先に口を開いたのは彼だった。


「部活は?」


『…行ってません。』


「そうか…もう日も暮れる、早く帰れ。」


そう言うとタバコを片手に書類に目を通し始めた。


『………』


「用がないなら、早く行け。」


タバコを持った手で、あっち行けと手を振る。


『あの…元気をもらいに……』


「はっ…!?」


私は何も考えずに言葉に出していた。


彼は書類から顔を上げ、一瞬何の事かわからないと言った表情で私を見る。


『あっ、えっと…』


久しぶりに彼に見つめられて、少し緊張する。


『なんか一日一回は先生に会って言葉を交わさないと、元気が出ないって言うか…』


私がモジモジしながら言うと、それを見た彼はふっと鼻で笑った。


「なんだそれ…。」


笑った顔のまま呆れたように言う彼を見て、私はおもわず大きな声を上げる。


『笑ったぁ…!』


「はぁっ?」


彼は私の言葉に、眉間にシワを寄せた。


私の前で久しぶりに笑った彼を見て私はおもわず笑顔になる。


いつも仏頂面で、私の顔さえ見ようとしなかった彼が、いつもと違う表情を見せてくれたのだ。


『よかったぁ。もう二度と先生の笑った顔見れないと思ってた。』


私がニッコリ笑って言うと、それを見て彼は顔をそむけた。


「別に笑ってないし…。お前が訳のわからない事言うから…バカにしただけだろ。」


『それでもいいっ!なんか元気出てきたっ!』


私が一人で浮かれていると、バンっと机を叩く音が響いた。


「もうやめてくれ!お前の顔は見たくない。」


『えっ…』



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