ワタシノタイヨウ
彼の言葉がすんなり頭に入ってこなかった。


(私の顔なんか見たくないって言った…?)


私がその場で何も言わず固まっていると、


「聞こえなかったか。お前の顔は見たくない。早く出ていけ。」


今まで以上に感情のない低い声で言い放つ。


私の目から涙が落ちた。


『なんで…そこまで……』


私が震えながら言う姿を見て、彼は辛そうな表情で言った。


「お前の笑った顔を見るのは辛いんだ…それにいつも泣かせてばかりいる…だから…」


彼の左手が私の頬に伸びた。そして親指でそっと涙を拭う。彼の優しさが伝わってくる。


「もう会わないほうがいい…」


『や…だよ。冷たくてもいい、他の女子と楽しそうに笑ってるのも我慢する、もう二度と私に笑顔見せてくれなくてもいい…それでも私会いたいよ…。』


私の顔から手を離すと、彼は窓の外に視線を移した。机の下にある右手をぎゅっと握りしめる。


「オレが会いたくないって言ってるんだ…」


再び感情のない声で私を突き放すように言う。


『私の事迷惑ですか…?』


「あぁ、迷惑だ……」


『わ…かり…ました…』


私は声にならない声でそう呟くとふらふらした足どりで走って部屋を出た。


彼の握られていた右手が、机の上をドンっと叩いた音は、私の耳には届かなかった。


そして私の後ろ姿を、廊下でじっと見つめるユウ君の姿があることにも……。



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