ワタシノタイヨウ
第三話 彼との距離
あの放課後に見た彼の涙が目に焼き付いて頭から離れず、私は毎日彼の姿を探していた。


最近わかったのは、あの裏庭のベンチに彼はよく現れる事。


裏庭へはほとんど人が来ない為、そこで昼寝をしたりタバコをふかしたりしている。


今日も彼はベンチで横になり顔に本を乗せて寝ていた。


(ハァ、毎日先生の後をつけて、これじゃまるでストーカーじゃない‥)


そんなことを考えながら、毎日話しかけるチャンスを伺っていた。


なんとかヘコむ気持ちを抑え、


(今日こそは‥)


勇気を振り絞り、足を一歩前へ踏み出す。


足音を立てないよう、そっとベンチへ近づいた。


彼の前まで来ると私は、


(寝てるよね‥どうしようかな)


などと考えながら、しばらく様子を伺っていた。


すると急に彼の手が動き顔を隠していた本を少し横にずらた。


そして眩しそうに目を細めこちらを見る。


「誰‥?」


陽射しで私の顔が見えないらしい。私は慌てて、


『鈴原…です。』


と答えると、彼は私の顔をしばらく見つめると


「ああ、君か‥」


と言って寝ていた身体をゆっくり起こしベンチへ座った。


「…何?」


と彼は少し不機嫌そうに言い、立っている私を見上げてたずねる。


(昼寝を邪魔されて怒ってる?)


一瞬ひるみそうになる気持ちを抑え、私は勢いよく彼の隣りに座った。



*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*
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