ワタシノタイヨウ
【〜ユウ君Side〜】


少し前……


最近部活に来ない先輩を心配してオレは部活の合間にカスミ先輩を探そうと校舎に来ていた。


オレは先輩がきっとあいつの所にいると思い、部屋へ様子を見に来たんだ。


そして、二人の会話を聞いてしまう…。


カスミ先輩が部屋を飛び出して行く姿を見て、一瞬追いかけようとしたけど…思いとどまり、先輩と入れ違いに、あいつの部屋へ入って行った。



「おいっ!」


オレはやつに近づくと勢いよく胸ぐらを掴んだ。


あいつは一瞬驚いた顔をして身構えたが、オレの顔を見てすぐ力を抜く。


「神尾か…どうした…」


「どうしたじゃねえよ。お前、先輩泣かしてんじゃねぇ!」


やつの冷静な態度が、オレをますます苛立たせる。


オレは今にも殴りかかりそうな勢いだった。


「…もうお前から大切な人は奪わない…だから…」


あいつの言葉にオレはイライラしながら、


「この前言った事、真に受けてんじゃねえよ!こんな事しなくたって、オレは自分の力で先輩を振り向かせんだから、余計なまねしてんじゃねぇ!」


掴んでいた手を乱暴に離し、ひとつ大きく息を吐く。


「それにっ、姉ちゃんの事は…お前のせいじゃないってわかってんだよ…ただ先輩の事もあってつい余計な事言っちまって…悪かったよ。」


オレは少し視線を落とし、最後は呟くように言った。


「でも…今もそう思ってるから、ああゆうセリフが出るんだよ…」


あいつは弱々しく笑った。


「…始めはそう思ったさ。でも、姉ちゃんがあんたの事どんだけ好きかオレ知ってたし。だからっ、今はもうそう思ってない。姉ちゃん悲しませたくないからな。」


オレは頭を掻きながら、視線は天井を向いていた。


あいつは驚いた顔でオレをしばらく見つめている。


さっきまでオレンジ色の光が部屋の中を染めていたが、二人の姿を隠すように、徐々に暗闇が部屋を支配し始めていた。



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