ワタシノタイヨウ
【〜ユウ君Side〜】

窓の外の沈んでいく太陽をじっと見つめていたオレは、やつに視線を移し真っ直ぐ見て言った。


「オレはカスミ先輩の笑顔が好きなんだ。泣いてる姿なんて見たくねぇ。だから、お前とは正々堂々と勝負して、先輩をオレのものにする事にした。」


ずっと黙っていたあいつが口を開く。


「…オレも鈴原は笑ってるほうがいいと思ってる…オレとお前は似てるのかもな。」


「はぁ!?似てる訳ないだろ。だいたい、オレの方が先輩の事お前なんかより好きだし。」


オレの言葉を聞いてあいつはふっと笑った。


「何がおかしいんだよ!」


「いや…それはどうかなって思って。」


「どうゆう意味だよ。まあお前みたいなおやじ、先輩もそのうち飽きると思うけどな。」


おやじと言う言葉に反応したのかあいつは大人げない事を言ってのける。


「鈴原はお前みたいなお子様よりオレみたいな大人の男が好きなんだよ。」


そう言うとタバコを取り出し火をつけた。


オレはカチンときて、やつの横顔を睨みつける。


「確かにあんたは大人で、先輩はあんたに惹かれてるよ。でもオレは諦めねぇ。」


部屋が暗くなってきたせいか、あいつのタバコの火がやけに赤く目立って目が離せなかった。


オレはそれをじっと見つめながら


「姉ちゃんの事は忘れてほしくない…けど…もう姉ちゃんに縛られる事はねえよ…。」


オレは言いたい事は全て言い終えその場から立ち去ろうとやつに背中を向けた。


その直後、ガタンっと言う音でオレは振り向く。


もうほとんど真っ暗になった部屋には、窓からのうっすらとした光で、あいつが立ち上がったのがわかった。


「ありがとう…」


あいつはそう言って頭を下げる。その表情はぼんやりとしか見えなかったけど、とても穏やかな顔に見えた。


オレは黙ったまま部屋を後にし、静まり返った廊下を歩きながら思う。


(やっぱ失敗したかなぁ…)


オレは先輩をものにするチャンスを逃したかも、と少し後悔していたのだった。



*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*
< 111 / 156 >

この作品をシェア

pagetop