ワタシノタイヨウ
部室に向かうため、途中でユウ君と別れる。


「着替えたら、ちゃんと来いよ」


何度も念を押された私は、仕方なく部室へ向かって歩き出した。


空はさっきより黒い雲に覆われ、まわりの空気は少しじめじめして肌にまとわり付いてくる。


(雨降ったら、部活中止だよな)


そんな事をぼんやり考えながら空を見上げていた私は、ふと部室に向かって歩いていた足を止めた。


そして、くるっと向きを変えるとある場所へ向かって歩き出す。



そこは………

久しぶりに裏庭にあるベンチへ私は来ていた。


この場所から校舎を見上げると、3階にある彼が仕事をしている資料室が見える。


私はベンチの前で立ち止まり、校舎を見上げた。窓が少し開いているのが見える。


でも今日は週一度の職員会議の日で彼はいないはず…。


(先生、窓閉め忘れてる…)


雨が降ったら中に入っちゃうなぁなんて考えながら、私はベンチに腰を下ろした。


そして大きなため息をひとつ。
今日は朝からずっとこんな調子だった。


(ユウ君怒ってるだろうな…明日ちゃんと謝らないと…)


足をぶらぶらさせながら、右から左へと早いスピードで流れていく灰色の雲をじっと見つめる。


この場所は、彼との思い出がたくさんある。ここにいると、自然と頭の中にその時の事が思い出された。


彼の涙を見て…
彼の過去を知って…
彼と楽しい時間を過ごして…


昨日泣きつくしたと思っていた涙がまた頬を伝った。


(まだ出るんだ…涙…)


私は自分の涙に少し感心しながら手でごしごしと涙を拭った。

拭ったはずの頬にまた涙が…
そう思った瞬間、頬にあたったのは私の涙ではなかった。

ずっとこらえていた空がとうとう泣き出したのだった。



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