ワタシノタイヨウ

私をさしていた傘が宙を舞い…
次の瞬間、強く手を引かれた私は彼に抱きしめられていた。


『…先生!?』


私はなぜ彼の腕の中にいるのか解らず、頭の中が真っ白になる。


抱きしめる彼の腕に力が入った。


「やっぱりお前を手放すのは無理みたいだ…」


『えっ…』


私は彼の言っている意味が解らなかった。昨日は迷惑だって言われたはずだから……


さっきまで音を立てて降っていた雨は、少し小降りになっていた。


「何度もお前を泣かせて…悪かった。もうお前の泣き顔は見たくない。」


彼は私を抱きしめたまま、優しく頭を撫でた。


「お前に出会って、お前の笑顔を見てオレの心は救われた。お前はいつの間にか、オレの太陽になってたんだ。サエの事はきっと一生忘れる事はない…けど、オレはお前の笑顔をずっと見ていたい。」


彼は少し身体を離すと、私の顔を見つめ優しく微笑む。


「サエの弟が現れた時、やっぱりオレはお前と一緒にいちゃいけないって思って、オレはお前から離れようとした。けどあいつ…神尾はわかってるって、もうサエに縛られる事はないって言ってくれて…またオレの心は救われた。」


雨に濡れた彼の前髪から、何度も雫が落ちる。その前髪の奥にある彼の真っ直ぐな瞳から私は目が離せないでいた。


いつの間にか雨はほとんど止み、時折雲の切れ間から太陽の光が私たちを覗いている。


「もう自分の気持ちに嘘はつけない…」


彼は再び私を強く抱きしめた。



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