ワタシノタイヨウ
私は彼の言葉を聞き、これは夢なんじゃないかと一瞬思う。


でも彼の温もりを確かに私は感じていた。


「オレたちには障害が多いかもしれない…でもオレはお前を守るから、お前はオレの隣りでずっと笑っててくれ…」


『うん…』


私は彼の胸に顔を埋めたまま、コクコクと何度もうなずいた。


もうすっかり雨は上がり、空を覆い隠していた灰色の雲は徐々に姿を消し始める。


やがて青空が顔を出し、太陽の陽射しが二人を照らし出した。


まるで私の気持ちを写し出しているようだった。


「でも、お前が雨の中ベンチに座ってるの見た時、マジびっくりしたよ…」


私は抱きしめられたまま、顔を上げ彼を見上げる。彼も私を見下ろし小さく笑った。


『なんでわかったの…』


「会議がいつもより早く終わってやり残した仕事があったから部屋へ行ったんだ。窓が開いてたから閉めようと思ったら、ベンチに座ってるお前が目に入って…気がついたら走ってたよ。」


私は嬉しくて目に涙が浮かぶ。
それを見た彼は私の頬にそっと触れた。


「カスミは危なっかしくて、ほっとけない…前も脚立から落ちたしな。」


『…!!』


(今先生、カスミって言った?)


私の頬と耳はみるみる赤くなる。顔を真っ赤にして照れている私を見て、彼はクスッと笑った。


「あいつには悪いけど、やっぱりオレの方がこいつのこと……」


彼は何か小さく呟いた。
愛おしそうに私を見つめる彼の顔がゆっくり近づく。


そして…
彼は優しく私にキスをくれた。



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