ワタシノタイヨウ

「あの時偶然風が吹いて…振り返るとカスミがいた…ちょっと焦ったよ。誰かに見られてるとは思わなかったからな。」


『私はあの時…空を見上げてる先生を見かけて、何故だかその場から動けなかった…。』


「…もしかしたら、サエがオレ達を引き合わせてくれたのかもな……なんて思うのは都合良すぎるか…」


彼は髪をかき上げると、少しうつむき目を伏せた。


『先生、私もそう思う。きっとサエさんが私たちを引き合わせてくれたんだよ!』


私が彼の手を強く握りしめると、彼は顔を上げ私を見る。


私は彼を真っ直ぐ見つめニッコリと笑った。


私の笑顔を見た彼は、


「そうだな…」


そう呟くと、私の髪にそっと触れ頭を優しく撫でた。


「今度一緒に…墓参り行くか…」


『えっ…いいの?』


「あぁ。」


なんだかその言葉がとても嬉しくて、私は涙が込み上げてきた。


「泣くなよ。」


『だって…』


「ったく、しょうがねぇなぁ…」


彼は私の椅子を引き寄せると、優しく抱きしめた。


そして子供をあやすように、頭を何度もよしよしと撫でる。


私はそれが居心地よくて、彼の胸に顔を埋めたまま、泣きやんだ後もしばらくそのままでいた。



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