ワタシノタイヨウ
『先生、ごちそうさま。すごくおいしかったぁ!』
「だろっ。」
帰りの車の中、私の言葉に嬉しそうに笑う彼を見ていると、こっちまで嬉しくなる。
でもだんだん家に近づくにつれて私は口数が減っていた。
なんだか彼と離れるのが寂しくて窓の外を見つめる。
「カスミ、どうした…」
私が静かになったのが気になったのか、彼は心配そうに声をかけてきた。
『ちょっと寂しくなって…』
「ば〜か、明日も会えるだろ。」
赤信号で車が止まる。
彼は私の方を向くと、私の手を握った。私はびっくりして彼の顔を見る。
「家着くまでこうしててやる。少しは寂しくないだろ。」
彼は照れているのか、すぐ前を向いて信号を見つめていた。
『うん…』
私は彼の手をぎゅっと握りしめ、彼に向かって微笑んだ。
『あっ先生、私の家すぐそこだから、ここでいいよ…』
彼はゆっくり車を止める。
『あの、送ってくれてありがと。あとラーメンもおいしかった。また連れてって下さいね。』
「あぁ…」
私たちは繋いだ手をなかなか離せないでいた。
『………』
「………」
車内に沈黙がはしる。
『じゃあ、帰るね…』
いつまでもここにいるわけにはいかないと思った私は、ドアに手をかけ外に出ようとする。
その時、開けようとしたドアを彼は手で押さえた。
『先生…?』
振り向くとすぐ近くに彼の顔が…私はそっと目を閉じ、そのまま私たちの唇は重なり合った。
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