ワタシノタイヨウ
なん箱か段ボールが空になると、空いていた棚も一杯になり、並べる場所がなくなった。


(う〜ん。真ん中の棚、一杯になっちゃったなぁ。)


先程空けた段ボール箱の中には、まだ若干本が残っていた。


私は空いている棚はないかキョロキョロと辺りを探す。


すると少し高い位置ではあったけど、空いている場所を見つけた。


(あれくらいなら、背伸びすれば届くでしょ。)


つま先立ちになり、腕を精一杯伸ばす。


(あと少し…)


『んっ…』


これ以上伸びないってほど手足を伸ばし奮闘していると、ひょいと私の手から本は離れて棚に収まった。


『えっ!?』


びっくりして体勢が崩れる。


それを後ろから優しく抱き留める腕に包まれた。


『先生!』


見上げると彼が微笑んでいる。


「カスミはチビなんだから、高い所はオレに言えよ。」


私を後ろから抱きしめたまま、意地悪な顔でニヤリと笑う。


『またチビって言ったぁ。これくらい届くもん。』


私は頬を膨らまし怒った顔をすると、彼の腕から逃れようと抵抗した。


「拗ねるなよ。」


そう耳元で囁かれ、恥ずかしくなった私はますます抵抗する。


「一生懸命背伸びしてるカスミ、かわいかったなぁ。」


クスクス笑いながら彼は、抵抗する私を壁際に押し付けると腕を掴み顔を覗き込む。


『もう先生のいじわる…』


私は観念して抵抗するのを止め、彼の顔を上目使いに見つめる。


すると彼の顔がゆっくり近づき…唇がそっと重なった。



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