ワタシノタイヨウ
『先生‥』と私が話し始めようとした瞬間、さっきまで笑っていた彼が急に静かになった。

そして私が話すより早く、真面目なトーンで、


「どうせ、この前の事聞きに来たんだろ。」


と言い空を見上げた。

彼から話題をふってきたので私は驚いたが、これはチャンスと思い遠慮なく聞いてみる事にした。


『この前なんで人違いだなんて嘘ついたんですか?あれ絶対先生でしたよね!』


私は彼のほうを向き、顔を真っすぐ見て聞いた。

すると彼は、フーっと空に向かって煙りをはくと、


「別に‥ただ面倒だっただけだよ。いろいろ聞かれても答える気無いし。」


そう言うと、短くなったタバコを消しケースへほおりこむ。


さっきまで一緒に笑っていたのが嘘みたいに、彼の言い方は冷たく、私の心を突き放す。


でも私は、ここでひるむわけにはいかないと思い、掌をぎゅっと握りしめ、


『嘘つかれたら、余計気になりますよ!それに…先生悲しそうな顔して立ってたから、私ずっと気になってて…』


私はこの間、彼の涙を見た事についてはまだ触れなかった。でも彼は、


「オマエには関係ない!」


そう言い放つとベンチから立ち上がり、


「オレにかまうな。」


と言ってその場を立ち去った。

私は彼の背中に向かって


『関係なくないよ!かまうなって言われても気になるし‥』


と叫んでいた。


彼に少し近づけたと思ったのに…。一気に突き放されまた遠ざかってしまった。


私はしばらくベンチに座り、空を見上げ太陽を見つめていた。


頬に涙がこぼれているのにも気付かずに‥。



*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*
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