ワタシノタイヨウ
私たちはとりあえず椅子に座り、ほっと息をつく。


彼はポケットからタバコを取り出すと1本口にくわえ火をつけた。


そして、フゥ〜っと大きく煙りを吐き出す。


吐き出された煙りは、開け放たれた窓から入る優しい風に乗って、ゆらゆらと窓の外へと消えていった。


私はぼんやりと彼の横顔とタバコの煙りを交互に眺めていた。


すると急にさっきの彼の行動が頭をよぎる。


私は首筋に彼の唇の感触を思い出し、おもわず手で首筋を押さえていた。


今更恥ずかしくなって、赤くなった顔を隠すようにうつむく。


彼はしばらく黙ってタバコを味わっていたが、私の態度に気づいたのかゆっくりとこちらを向いた。


「カスミ、どうした?」


私の顔を覗き込もうと首を傾ける。私は咄嗟に視線を避けるように今度は横を向いた。


私の顔が赤い事に気づいた彼は、何かをさとったようにニヤリと笑った。


「そういえば、さっきは今井先生に邪魔されちゃったなぁ。」


ぽつりと呟くように言うと、またタバコを口元へ運ぶ。


『…!!』


私はその言葉に反応し顔はますます赤く熱くなる。


「…ぷっ、今変な想像したろ?」


そう言って彼はからかうように、ふっと鼻で笑った。


『べ、別にしてないもん。』


「そうかぁ。じゃあなんでカスミの顔は赤いのかな〜」


私が強がってみせると、彼は楽しそうに微笑みながら、私の頬にそっと触れる。


「学校で襲ったりしないから安心しろよ。」


優しい瞳で見つめる彼を見つめ返していると、彼は触れていた頬をむにゅっとつねった。


「まっ、我慢できたらな。」


そう言うと私の顔を見て楽しそうにケラケラ笑う。


その笑顔を見ていたら私は自然と言葉が口をついた。



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